人の”学ぶ”について


人であるならば、生物ならば、常に学習し進化し続けているはずです。勉強ではなく、学習です。勉強は強いられるものですが、学習は自らの意思で行う学びです。ここを誤解してはいけません。

学習は本来、命を守る術であったはずです。


今、猛毒を持った蛇があなたの命を狙っています。その毒蛇はあなたの方へ近づいています。しかしあなたはその毒蛇について何も知りません。毒をもっていることも、危険であることも知りません。あなたは蛇に噛まれます。とても痛いです。その瞬間、蛇に敵対心を持つと同時に危険な存在であると認識するはずです

これが学習です。あなたは、蛇は危険な存在だということを学びました。さいわい毒死は免れました。数日後、同じ蛇に出会います。あなたは過去にあの蛇が危険であることを学びました。あなたは恐らく、蛇から遠ざかろうとするか、もし くは蛇を殺そうとするでしょう。おかげで今度は噛まれませんでした。学習することで生き延びることができたのです。

脳は生死に関わることを最重要として認識します。そういった物や状況について忘れることはないでしょう。




人の脳は並列処理には向いていません。複数のことを同時に進めようとしてもうまく行きません。一つのことにしか注意できないのです。毒蛇を見た時、蛇しか目に入りません。後ろに何本の木が立っていたかなんて分かりません。なぜなら毒蛇のような危険な存在が何匹いるのかにしか集中していなかったからです。





文字よりも絵の方が記憶に残ります。文を見るよりも絵を見た方が学習効果が最大89%も向上します。



仕様書のような堅い言葉よりも、会話の中で交わされる話し言葉の方が記憶に残ります。なぜなら語りかけられることにより、その学習に参加している錯覚に陥るからです。そのため学習に積極的になります。また、日常的に使用される言葉は話し言葉なはずです。仕様書のような堅い言葉には違和感しか感じられないでしょう。一方、使い慣れているであろう話し言葉なら、扱いやすく理解しやすいはずです。


心が動いた瞬間を、脳は記憶し続けます。特に好奇心や喜び、感動している時の状況は記憶されやすいです。好奇心が学習を導きます。学習した内容で問題解決が出来たときに喜びを味わえます。より理解が深まればそのことに感動するでしょう。感動は好奇心を呼びます。理想のサイクルです。辛いのは最初の一歩だけです。このサイクルを1周でも味わえれば、辛いことも乗り越えられるはずです。



脳は多くの糖分と水分を必要とします。体の中で一番糖分を消費する器官は脳です。また同様に多くの水分も消費します。できるならば学習机に水分とブドウ糖を常備しておきましょう。また脳が疲れたら休むことが重要です。記憶の整理が必要ならば睡眠ほど適したアクションは他にありません


学びたいものに対する自分なりの感想を持ちましょう。そうすることで学習に積極的になれますし、その世界に入り込むこともできます。



自分が学んだことを他の人に説明しようとすれば、学んだことへの理解が早まります。学習するならば黙読よりも音読の方が大事です。読むだけでは脳は一部しか使われません。声に出すことで脳の別の部分も使うことができるようになるのです。また、他の人に説明するうちに自分がまだ理解できていない部分が自然と姿を現します。


脳は、自分にとって不必要だと思われることを忘れようとします。結果忘れます

脳は、学ぼうとしていることが自分にとって必要か不必要かを、あなたの無意識のうちに判別しています。毒蛇について学ぶことはあなたにとって必要です。なぜなら生死に関わるからです。あなたの脳も、私の脳も、重要だと思うことしか記憶したくはないし、学びたくもないのです。



行動に勝る理解はありません。図書館で本を読み終え、うなずいた後じっとしているだけではいけません。うなずいた内容を行動に移すことで、理解した内容をさらに理解できるようになります。たとえそれが誤った理解であったとしても行動に移せてさえいれば、その理解が間違いであったことに自然と気づくはずです。



学習するならばリラックスしましょう。学習は記憶、理解、実践からなっています。難しいことを理解しようとする時、身構えてはいけません。それは料理のレシピを学ぶ時となんら変わりのないことなのですから。緊張をほぐし、”難”という字を忘れましょう。そう、あなたに理解できないものなどありません。


学ぶ内容がたくさんあるとき、それらを一括りにして考えてはいけません。小さな単位に分割して考えましょう。たとえば、あなたが上司からページ数が700ページある資料を借りたとします。上司は”1週間後にすべて読み終えて返すように”と言ってきました。1週間で700ページを読む、と考えたとしましょう。あなたは”700ページもあるのか。でもまだ一週間もあるし、、、”と考えてしまうでしょう。ここで、1日100ページずつ読む、と考えてみましょう。気持ちが楽になり、長続きもするはずです。


浅い思考は視野を広げ、深い思考は視野を狭めます。あなたは一人旅で見知らぬ土地を訪れました。そこは大きな街です。あなたはこの街で一泊しようと考えていますが、宿がどこにあるのかわかりません。そんなとき、あなたならどうしますか?街の端から端まで、宿が見つかるまで一軒一軒シラミつぶしに探して行きますか?それとも高台に上って街を見下ろし、宿の看板を見つけますか?よほど運が良くない限り、高台に上って全体を眺めた方が効率が良く宿を見つけられるはずです。学習手順にも同様のことが言えます。始めは広い視野を持つべきです。深く考えてはいけません。大まかに捉えましょう。学んでいくうちに、徐々に視野を狭めて行けばよいのです。そうすることで本当に必要なことだけを効率よく学べます。



最後に、人の脳は常に変化を求めています。つまり、自分の脳へのご褒美は、新しいことに触れること、それを学ぶことなのです。それはもちろん、必要なことです。



クリップアートはClker.comより
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