序章
電子機器(ガジェット)が飽和している。
ガジェットを自らの手で組み上げたければ、はじめはキットが良い。Googleという名のほぼ世界規模のロボットクローラを味方につければ、あなたはあらゆるキットを手に入れることができる。たとえば”自作アンプキット”とクローラに尋ねてみて欲しい。必要な部品はすべて揃っていて、それら部品を付属のプリント基板に半田付けしてゆくだけで、アンプ(増幅器)が作れてしまうというキットの情報を提供してくれるはずだ。
私はキットを、とても素晴らしい商品だと思う。なぜなら、大抵のキットの取説にはそのガジェットの動作原理が記されているし、なにより電子機器を作る喜びを素直に味わうことができるからだ。また、幾つかのキットにはオプションとしてカスタムする方法が書かれている。例えば先のアンプキットで言うと、増幅の度合いを高めたり、あるいは音質を向上させるカスタムもあったりする(なぜ増幅度を高める方法や、高音質化する方法を初めから導入せずにオプションとして提供するのか?という問に簡単に答えよう。それぞれトレードオフな関係にあるからだ。つまり音質を高めると増幅度が下がり、増幅度を高めると音質が下がり…とね)。
しかし世の中には、キットだけでは物足りないという人々がいる。極力自分の手で部品を集め、自分の手で作り、完成させたいと考える人々だ(これを頂点まで上り詰めようと考える人は、自分で理論を考え、回路を設計し、それを現実の部品で組み上げ、その理論を実現できてしまうような人になるだらう。そんな人は是非会社を立ち上げ、私達に良き製品を提供して欲しい)。
ガジェットの回路を組む方法もいくつかある。ブレッドボードやユニバーサルボード、パフボードを使う方法。ブレッドボードはいわゆるお試し用だ。試行錯誤して新たな回路を組み上げるには十分だが、長期保存には向いていない。ユニバーサルボードやパフボードは、ブレッドボードよりも長期保存に向いている。でも回路を組み上げるときに配線に気を配らなければならず、大抵ゴチャゴチャになってしまう。ならば最善の方法は奴しかいない。プリント基板だ!
本編へ続く…