前回までは...
相似次元の世界を案内してくれる数式を紹介した。
$ r $ はスケール
$ N $ は分割数 自己相似図形は次元の数が整数。
フラクタル図形は次元の数が実数だった。
$$ N = r ^ D $$
$ D $ は次元の数$ r $ はスケール
$ N $ は分割数 自己相似図形は次元の数が整数。
フラクタル図形は次元の数が実数だった。
次元について解く
相似次元が非整数となる図形 = フラクタル図形
先の式を次元 $ D $ について解いてみよう。
先の式を次元 $ D $ について解いてみよう。
$$ \begin{aligned}
N &= r ^ D \\[.5em]
r &= \sqrt[D]{N} \\[.5em]
D &= \log_r N
\end{aligned} $$
スケール $ r $ を底とする分割数 $ N $ の対数を取れば、次元 $ D $ を求めることができる。つまり、この式を使って次元数を求めることで、解が整数ならば"自己相似図形"、小数を含む数(実数)ならば"フラクタル図形"であると判別できるわけだ。では、今からある相似図形を描いてみることにしよう。それが"ただの自己相似図形"なのか、"フラクタル図形"なのか、上の判別式で判別してみよう。カントールさんの線分
次の手順で描ける線分はどんなものか?
上から順番に、真ん中の区間が次々と消されていく様子
1番下が手順を無限回繰り返した後の線分の様子
分かりやすさのため、線分の両端に赤印をつけている
さて、この図形はフラクタルか?判別式に判定してもらおう。まず線分を $ 1/3 $ に区切ったので、スケール(縮尺)は $ r = 3 $ 。次に、3等分した区間の真ん中を取り除いた後に残る区間は2つなので、分割数は $ N = 2 $ となる。式に当てはめて計算をすると、
(と言っても最終的に得られる図形は何も無いような図形だ)
直線のように、ある1点を決めると位置が決まってしまうような空間を1次元空間と呼ぶ。つまり自由度は1。判別式よりこのフラクタル図形は1次元よりも低い次元であることが分かった。しかし、決して0次元ではない。”無”では無かったのだ!
最終的にどれほどの長さの線分を取り除くのかを計算してみるのだ。
まず最初に、用意した線分の長さは1である。1以上でも以下でもなく、ぴたりと1である。次に、取り除かれる区間の長さを求めてみる。最初、線分全体から $ 1/3 $ の長さの区間を取り除くので、取り除かれる長さは $ 1/3 $ である。次のプロセスでは残った区間をそれぞれ3等分した区間が取り除かれるので、その時取り除かれる長さは $ 2/9 $ 。最初に $ 1/3 $ 取り除いたので合わせて $ 1/3 + 2/9 = 5/9 $ 。次のプロセスでは $ 4/27 $ が取り除かれるので $ 1/3 + 2/9 + 4/27 = 19/27 $ 。どうやら取り除かれる線分の長さは等比数列の無限和となりそうだ。
ちなみにこの線分には名前が付いている。 カントール集合(Cantor Set) 長さ1の線分から、長さ1を取り除いても、なお”無”にならない図形。矛盾の無い数学の世界から生まれた矛盾のような図形。それこそがフラクタル図形の真の姿なのかもしれない。
- 長さ1の線を描く。簡単のため単位は考えない。
- その線を3分の1づつに区切る。これで長さ1/3の区間ができた。
- 真ん中の区間を消す。跡形もなく。
- 両端に残った2つの区間をそれぞれ3分の1づつに区切る。
- それぞれの真ん中の区間を消す。
- 同様にして残った線分の真ん中3分の1を消し続けてゆく。
- この手順を無限回行う。
上から順番に、真ん中の区間が次々と消されていく様子
1番下が手順を無限回繰り返した後の線分の様子
分かりやすさのため、線分の両端に赤印をつけている
$$ D = \log_{3}2 = 0.6309... $$
次元は $ D \approx 0.631 $ 。次元数が実数であることから、つまりこの図形はフラクタルであった!(と言っても最終的に得られる図形は何も無いような図形だ)
直線のように、ある1点を決めると位置が決まってしまうような空間を1次元空間と呼ぶ。つまり自由度は1。判別式よりこのフラクタル図形は1次元よりも低い次元であることが分かった。しかし、決して0次元ではない。”無”では無かったのだ!
線分についてもう少し調べる
ここで面白いことをしてみよう。最終的にどれほどの長さの線分を取り除くのかを計算してみるのだ。
まず最初に、用意した線分の長さは1である。1以上でも以下でもなく、ぴたりと1である。次に、取り除かれる区間の長さを求めてみる。最初、線分全体から $ 1/3 $ の長さの区間を取り除くので、取り除かれる長さは $ 1/3 $ である。次のプロセスでは残った区間をそれぞれ3等分した区間が取り除かれるので、その時取り除かれる長さは $ 2/9 $ 。最初に $ 1/3 $ 取り除いたので合わせて $ 1/3 + 2/9 = 5/9 $ 。次のプロセスでは $ 4/27 $ が取り除かれるので $ 1/3 + 2/9 + 4/27 = 19/27 $ 。どうやら取り除かれる線分の長さは等比数列の無限和となりそうだ。
$$ \frac {1}{3} + \frac {2}{9} + \frac {4}{27} + ... $$
等比数列であることをわかりやすく書くと、
$$ \left( \frac {1}{3} \right) \left( \left( \frac {2}{3} \right)^0 + \left( \frac {2}{3} \right)^1 + \left( \frac {2}{3} \right)^2 + ... \right) $$
この式を解いてみる。
$$ \left( \frac {1}{3} \right) \left( \frac {1}{1-\frac{2}{3}} \right) = 1 $$
なんということか。長さ1の線分から長さ1の区間を取り除いていたのだ。残った区間を3等分した区間のうち、真ん中の区間を取り除く。この手順を無限回繰り返すと、線分自体が無くなるというのだ。しかし、判別式が証明したことは更に驚くべきことである。1から1を引いても"無(0次元)"ではなかったのだから。
ちなみにこの線分には名前が付いている。 カントール集合(Cantor Set) 長さ1の線分から、長さ1を取り除いても、なお”無”にならない図形。矛盾の無い数学の世界から生まれた矛盾のような図形。それこそがフラクタル図形の真の姿なのかもしれない。
シェルピンスキーさんの三角形
せっかくなのでフラクタル図形をもう一つ紹介したい。
今度は次の手順で得られる2次元図形を考える。
つまり次元 $ D $ は、
この三角形も無限回手順を踏むと面積が0に収束してしまうから不思議だ。
今度は次の手順で得られる2次元図形を考える。
- 一辺の長さが1の赤い正三角形を用意(下の図も正三角形だと思ってほしい)。
- その真中を一辺の長さが1/2の逆三角形状にくり抜く。
- 残った三角形は面積が元の1/4の赤い三角形3つ。
- 残った三角形の真中をそれぞれ一辺の長さが1/2の逆三角形状にくり抜く。
- このように三角形の真中をくり抜く動作を無限回繰り返す。
つまり次元 $ D $ は、
$$ D = \log_{2}3 = 1.5849... $$
この不思議な三角形模様は
シェルピンスキーの三角形(Sierpinski Triangle)
と呼ばれ、1次元と2次元の狭間に暮らしていることがわかる。この三角形も無限回手順を踏むと面積が0に収束してしまうから不思議だ。
メンガーさんのスポンジ
折角なので3次元のお話も。
一回のプロセスで残る小さな立方体の数は20、元の立方体の辺の長さは小さな立方体の3倍の大きさであることから、
無限回手順を繰り返すと体積は0へ収束してしまう。つまり、有限の空間中に無限の表面積を持つ面白い図形なのだ。
- 一辺の長さが1の立方体を考える。
- 各面を9等分に区切る。27個の立方体に分かれルービックキューブ状態になる。
- それぞれの面で真ん中にある小さな立方体を取り除く。
- これで小さな立方体が7個減って20個が残る。
- 各小さな立方体からも2,3の手順と同様にくり抜いて行く。
- このくり抜く手順を無限回繰り返す。
一回のプロセスで残る小さな立方体の数は20、元の立方体の辺の長さは小さな立方体の3倍の大きさであることから、
$$ D = \log_{3}20 = 2.7268... $$
2次元と3次元の間の住人であることが分かる。無限回手順を繰り返すと体積は0へ収束してしまう。つまり、有限の空間中に無限の表面積を持つ面白い図形なのだ。
勘の良い方は今まで見てきた図形に疑問を抱くかもしれない。 どのフラクタルも長さや面積、体積が0になるはずなのに、図形として"見る"ことができるからだ。そう、フラクタル図形は正確に描画することが不可能な図形なのだ。なので、数回手順を踏んだだけの図をイメージ図として示している。無限回手順を繰り返すと、本当に図形として形を残さないのか?計算した相似次元数を見ると、"何か"が残るように思えてならない。ここに数学の面白さが有るのだと思う。
そういえば、人間の消化器官は有限の体積の中で効率よく栄養を吸収しようと進化した結果、表面積を最大にすることのできるフラクタル図形に落ち着いたそうだ。フラクタルと言っても消化器官のような物理的な物体に無限の概念は適用できなかったわけだが、それでも自然な進化の中でフラクタル図形が描かれる例は他にもある。自然界にも現れる不思議な図形"フラクタル"。その不思議さ故に魅力的だ。
参考リンク
- フラクタル図形: http://ja.wikipedia.org/wiki/フラクタル
- カントール集合: http://ja.wikipedia.org/wiki/カントール集合
- メンガーのスポンジ: http://ja.wikipedia.org/wiki/メンガーのスポンジ
- シェルピンスキーの三角形: http://ja.wikipedia.org/wiki/シェルピンスキーのギャスケット
2455958502651567483
https://www.storange.jp/2013/02/blog-post.html
https://www.storange.jp/2013/02/blog-post.html
フラクタル図形をつくる
2013-02-26T11:12:00+09:00
https://www.storange.jp/2013/02/blog-post.html
Hideyuki Tabata
Hideyuki Tabata
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