Zuseの加算回路

Konrad Zuse


ドイツの土木建築士. 独自の手法でコンピュータを開発した. Zuse氏のコンピュータにはスイッチに電磁リレイ(旧継電器)を用いたものがある. 1941年には電磁リレイおよそ2000個を用いてZ3と呼ばれるコンピュータを製作,チューリング完全性を有していた.

全加算器

回路図


真理値表


ABCinCoutSUM
00000
00101
01001
01110
10001
10110
11010
11111

今回製作したのはZuse氏が設計した"Dual-Rail-Carry Full Adder". 2進数を扱う論理回路で,桁上り(Carry)に対応した全加算器である. 上にその配線図と真理値表を載せた. AとBは入力であり,SUMにはAとBを足し合わせた結果が出力される. +Vは真理値表の1に対応した電圧で,今回利用した電磁リレイは+12V動作品なので+12Vとなる. また,接地(GND)は真理値表の0に対応している. 結果の桁上りはCoutへ出力される. 桁上りの反転"¬"出力もある. 反転なので,Coutが0の時,¬Coutは1を出力する. 逆もまた然り. 画像中でCoutの上に棒が付いたものがそれである. Cinについても同じ表記は反転を意味する.
桁上り信号は裏回路(Dual-railの意)を通るため,機械的動作による遅延は最小限に抑えられる. 4極双投電磁リレイを2つ用いて1bit分の全加算器を構成. 今回はAとBそれぞれを4bitにしたいので,4×2=合計8個の電磁リレイを用意. また,減算も行えるよう最下位桁(LSB)の桁上り,いわゆる補数入力も用意した.
回路はTAMSのサイト"dual-rail-carry full adder (Konrad Zuse)"に掲載されているものを利用. 和田英一氏の製作記"リレー加算器"も参考に作業を進めた. 和田氏のブログ"パラメトロン計算機"にはより詳細な分析と解説が載っているので,併せて参照されたい.

製作した加算回路の概要

部品リスト

  • LED: 5個
  • 電磁リレイ: 8個
  • アルミニウム板: 1枚
  • 単極双投スイッチ: 9個
  • リレイ用ソケット: 8個
上の画像は完成予想図. AとBの横に並んでいる4つのスイッチを切り替えることで数値を入力する. 一番右が最下位桁(LSB),左が最上位桁(MSB)である. AとBは共に4bitあるので,10進数でいう0~15まで入力可. A+Bを行う回路自体はΣの横に並んだ8つの電磁リレイである. 電磁リレイは簡単に交換出来るようソケットへ装着する予定. 一番上に位置するCとS1~4は結果を表示するLED. LEDは最上位の桁上り(C)も含めて5つあるので,10進数でいう0~31まで表示可. 完成予想図には記していなかったが,完成品ではAとBの間,LSB側にもうひとつスイッチを設けた. これが補数入力となる. 電磁リレイ2個で1bit分の全加算器を構成するので,4bitならば8個必要. アルミニウム板を加工してスイッチやLEDを配置する計画.

加算回路の製作

I. アルミニウム板を加工. LED,スイッチ,電磁リレイ用ソケットを埋め込むための穴を開けた. 板のディメンションは300 x 200 x 1.5[mm].
II. LED,スイッチ,ソケットを埋め込む. 電磁リレイは向かい合わせに配置したほうが配線が簡単. 写真一番奥に見えるスイッチが補数スイッチ.
III. 裏面. 電極数は149ヶ所. 電磁リレイに合わせ,回路には+12Vを入力する. LEDは+5V動作品なので180Ωの降圧抵抗を挿入し電圧を調整した.
IV. 配線後. 電源は+12VのACアダプタを利用する予定. 動作テストでは利便性を考慮し直流安定化電源にて+12Vを供給. 最大0.7Aの電流消費を確認.
V. 側面. 一枚のアルミニウム板を曲げスタンドにした. 台座にあたる部分にACアダプタを置き,電源/重石を担ってもらう予定.
VI. 完成図. LEDによる出力5bit. 4+4bitの入力に加え補数入力が1つ. おおよそ予想図通りとなった.

演算テスト

1 + 1 = 2

  1. Aに1をセット
  2. Bに1をセット
  3. 補数は0にセット
  4. 結果Sは2

9 + 3 = 12

  1. Aは8と1をセット
  2. Bは2と1をセット
  3. 補数は0にセット
  4. 結果Sは8と4なので12

減算の準備

  1. 補数を1にセット
  2. Bを反転し"2の補数"を表現
  3. 結果は最上位桁を無視した値
  4. Aから¬Bを減ずる演算を行える

12 - 5 = 7

  1. Aは8と4をセット
  2. ¬Bは4と1をセット
  3. 補数は1にセット
  4. 結果Sは4と2と1なので7
2230216947786348075 https://www.storange.jp/2014/02/zuse.html https://www.storange.jp/2014/02/zuse.html Zuseの加算回路 2014-02-28T10:26:00+09:00 https://www.storange.jp/2014/02/zuse.html Hideyuki Tabata 200 200 72 72