Sphere(球)の体積を,Cone(円錐)とCylinder(円柱)より求めてみましょう. Cavalieri(カバリエリ)の原理を用います. これは17世紀,イタリアの数学者であったBonaventura Cavalieriの提唱した原理で,"切り口の断面積が常に等しい2つの物体の体積は等しい"というものです. どの高さで切断しても2つの物体の断面積が等しければ,体積は等しいというこの考え方は,積分法の先駆けとなるアイディアでした.
HemisphereとCylinder
左図にはHemisphere(半球)とCylinderが描かれています. 今回の前提は,HemisphereとCylinderの半径が共に$ r $であることと,Cylinderの高さ$ h $も$ r $に等しいということです. また,よく見るとCylinderはその中身が,半径と高さが$ r $のCone状にくりぬかれています. 図中を上下移動している枠は切断面を表しています. 切断位置$ c $が最も下にある時を$ c = 0 $とし,最も上にある時を$ c = r $とした時,次の項で説明するようにHemisphereとCylinderの断面積は常に等しく成ります. Cavalieriの原理より図のHemisphereと,くりぬかれたCylinderの体積はまったく等しいことが判るのです. Cylinderの体積$ V_{cylinder}' $は,その高さ$ h $が半径$ r $と等しいので次式に成ります.
$$ V_{cylinder}' = \pi r^3 $$
このCylinderの中身が,半径と高さが$ r $のConeにてくりぬかれているので,実際の体積$ V_{cylinder}' $は次式です.
$$ \begin{aligned}
V_{cylinder} &= V_{cylinder}' - V_{cone} \\[1em]
&= \pi r^3 - \frac{1}{3} \pi r^3 \\[1em]
&= \frac{2}{3} \pi r^3
\end{aligned} $$
この体積がHemisphereの体積$ V_{hemisphere} $と等しいということが,Cavalieriの原理により判っていますので,
$$ V_{cylinder} = V_{hemisphere} $$
Sphereの体積$ V_{sphere} $は,Hemisphereの体積$ V_{hemisphere} $の2倍なので,
$$ \begin{aligned}
V_{sphere} &= 2 \cdot V_{hemisphere}\\[1em]
&= \frac{4}{3} \pi r^3
\end{aligned} $$
CylinderとConeの体積で,Sphereの体積を求めることが出来ました. 驚くべき事実です. さて,次の項では切断位置(高さ)$ c $におけるそれぞれの断面積を求めて行きます. それら断面積が等しければ,上に示した様にCavalieriの原理が適用出来,球の体積が上式と成ることを確認出来ます.
Hemisphereの切断面積を求める
$$ r^2 = x^2 + c^2 $$
黄色の三角形の斜辺はHemisphereの半径$ r $です. 今求めたい長さは断面の半径$ x $なので,上式を$ x $について解きます.
$$ x = \sqrt{r^2 - c^2} $$
よって断面積は次式と成ります.
$$ \begin{aligned}
S_{hemisphere} &= \pi x^2 \\[.5em]
&= \pi \left( r^2 - c^2 \right)
\end{aligned} $$
切断面の高さ$ c $は$ 0 $(Hemisphereの底面)から$ r $(頂点)まで成り得ます. もし$ c = 0 $ならば,断面積は$ \pi r^2 $に成り,$ c = r $ならば断面積は$ 0 $になるので,どうやら上の式は正しそうです.Cylinderの切断面積を求める
$$ \begin{aligned}
S_{cylinder} &= S_{cylinder}' - S_{cone} \\[1em]
&= \pi r^2 - \pi c^2 \\[1em]
&= \pi \left( r^2 - c^2 \right)
\end{aligned} $$
これは,Hemisphereの断面積とまったく等しいものです. よって,Cavalieriの原理が適用出来ることが代数的に確かめられた訳です.
結論
以上,Cavalieriの原理によりCone状にくりぬかれたCylinderとHemisphereの体積が等しいことが判り,その事実を応用してSphereの体積を求めました. この事実は左図を見ると納得出来ることでしょう. この図はZachary Abel氏のブログ"Three-Cornered Things"に掲載されている物です. 終わりに. ここで行っていることは数学的な証明ではありません. メモ程度の記録です. そのため,数学において大切な要素である定義や証明をいくつも省略しています. また,説明も決して厳密ではありません. しかし,そこから得られた結果は真実です.
3629686792115472501
https://www.storange.jp/2014/08/cavalieris-principle.html
https://www.storange.jp/2014/08/cavalieris-principle.html
Cavalieri's Principle
2014-08-17T19:24:00+09:00
https://www.storange.jp/2014/08/cavalieris-principle.html
Hideyuki Tabata
Hideyuki Tabata
200
200
72
72