私のお気に入りTVシリーズのひとつであるHBOのSilicon Valleyで話題になった"マイナーツァーゲンのカバン". 原文では"Meinertzhagen's haversack(マイナーツァーゲンの雑嚢)"と書きます. ここではマイナーツァーゲンとは誰か,その人のカバンが何なのか,そしてTVシリーズ"Silicon Valley"とどうつながっているのかを紹介したいと思います. シーズン3エピソード3のネタバレが含まれているためご注意ください.
マイナーツァーゲンとは誰?
右の方がRichard Meinertzhagen(リチャード・マイナーツァーゲン)少佐です. 生没年は1878-1967. 鳥類学に興味があったようです. 彼は第一次世界大戦にてイギリスの情報部員,いわゆるスパイとして活動していました. 少佐と呼びましたが,今回の主題であるカバンと関わる時期に少佐であっただけで,最終的には大佐にまで昇進しています(1918年8月). 中東ではアラビアのロレンスでおなじみのトーマス・エドワード・ロレンスとも知り合い,後にカバンが絡む作戦を決行するに至ります.
彼のカバンが何なのか?
時は1917年,イギリス軍はオスマン軍の攻撃によりガザ侵攻に失敗,段々と疲弊して行きます. ロレンスとマイナーツァーゲンはエルサレム奪回の足掛かりとしてベエル・シェバ侵攻を提案. ここでイギリス軍は敵であるオスマン軍を出し抜くための偽装工作を行います. マイナーツァーゲンは偽の計画書を入れたカバンを持ち,敵の陣地へ踏み込みました. 敵のパトロール隊に見つかったマイナーツァーゲンは慌てて逃げるフリをしてカバンを置き去りにします.
この時置いていったカバンこそ,今回の主題であるマイナーツァーゲンのカバンです. カバンの中にはベエル・シェバ侵攻は陽動作戦であり,ガザ侵攻が本当の目的であると書かれた偽の計画書に加え,偽の暗号表や個人装備も入れられ,偽物と気づかれないよう入念に偽装されたものでした. また,カバンには事前に馬の血が付けられており,あたかもマイナーツァーゲンが負傷しながらも,命からがら逃げ切ったような演出も施され,見事オスマン軍はこの偽計画を信じ込んでしまいます. ベエル・シェバ侵攻が陽動作戦であると信じたオスマン軍はガザの防衛戦を強化,手薄になったベエル・シェバへイギリス軍が本攻撃を仕掛け,結果ベエル・シェバ侵攻を果たします. ガザの後方連絡線を押さえられたオスマン軍はガザから撤退,その後の追撃戦で勝利を収めたイギリス軍はエルサレム奪回を成し遂げたのでありました.
Silicon Valleyとのつながりは?
ジャレッドは偽装工作という意味合いで"マイナーツァーゲンのカバン"という言葉を出しました. "役を演じろ"と言っていましたね. "プラットフォーム"をつくれるからと楽しそうに仕事をしては敵(ジャック・バーカー)に悟られてしまう. "箱"を嫌々つくっているように役を演じないと(ディネシュのチェーンも嫌々からかわないと...)バレてしまう,ということです. 確かに"マイナーツァーゲン"がカバンをわざと置き去りにした時のように,役を演じろ!というわけです.
そして,いざ出社しますがハプニングが起きます. リチャードが機密書類を敵の前で落としてしまうのです(敵の部下が拾うという点でも一致します). マイナーツァーゲンの場合は偽の機密書類でしたが,こちらの場合は正真正銘,本物の機密書類です. 奇しくも名前は同じリチャード(リチャード・ヘンドリックスとリチャード・マイナーツァーゲン!).
イギリス軍のリチャードは偽の書類を敵に見せつけ自軍を成功へと導きましたが,現代のリチャードはただのヘマで敵に書類を見せつけてしまった,というなんとも皮肉な終わり方だったのです. 素晴らしいシナリオ! よく出来ています. この回を観て,やはりこのTVシリーズは面白い!と再確認しました.
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https://www.storange.jp/2016/11/blog-post.html
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マイナーツァーゲンのカバン
2016-11-08T21:20:00+09:00
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Hideyuki Tabata
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