ふと思った。蟲師は現代日本における中小企業のITコンサルタントと似た部分が多いと。
昨今デジタル化(DX)だの叫ばれているが、なかなか中小企業、特に下町の小さな会社や地方の中小企業などだとIT専門家が社内に居ないケースがある。そんな会社はどうするかというと、派遣されて来た“専門家”にツールを導入してもらったり、社内ソフトを作成してもらったりする。蟲師の世界でいうところの村々が、現代日本の中小企業にあたる。
蟲がIT技術なら、そんな蟲という中小企業にとっては“厄介”な存在の専門家がいないのだ。そこへふらりとITコンサルタント(IT専門家)が立ち寄って、うまいこと蟲と人の共存を助ける。
蟲が見える見えない、というのも、IT技術が分かる分からない、という点と似通っている。分かる人には目に見えて理解できるが、分からない人には全く分からないのだ。蟲が見えるあなた。その能力は誇れるものであることを忘れないでほしい。
蟲師もある種のコミュニティが存在するように、IT専門家にもコミュニティがある。派遣会社の一員かもしれないし、個人事業主だとしても民商や商工会などで繋がっている人がいるかもしれない。助けた村人、もとい助けた会社が今度は違う機会に私たちを助けてくれるかもしれない。人と人の繋がりはどのような形であれ、大変貴重なものだ。
パソコンがいじれるだけで大分違う。ホームページの更新や編集、ソフトウェアのインストールやセットアップ、ハードウェア面での不具合の診断なども行えればなお強い。強くなる道はただ学ぶのみ。けれどあまり学ぶことに重きを置きすぎて実践不足になってしまうと大変惜しい。ある程度知識が身に付いたら、問題にぶつかってみてほしい。どうしても自力でダメならば巻物、もとい検索エンジンで検索してみる。それでもダメならコミュニティの力を借りよう。蟲師には巻物や文(ふみ)、あるいは蟲を使った情報共有術があるように、現代の私たちにもインターネットという素晴らしい蟲がいる。蟲の力も借りてその道に詳しい人に、分かるまでしっかりと質問してみよう。ただし、投げやりや闇雲な質問は控えた方が良い。こうこうここまで行ったがこれの意味が分からない、などのようにきちんと「何がどうしてどうなった」のか書くようにすると吉。
蟲師はその村がどの蟲のどのような特性によって、どのように困っているのか調査し、蟲の特性を活かしてその問題を解決しようと尽力する。その会社がどんなIT技術を望んでいて、そのIT技術がどんなものなのか、きちんとした知識があることで上手な提案ができるようになる。これは1回2回で習得できる所業ではない。相手の意図をきちんと汲み取ることが何よりも重要である。基本的に、一方的な押し付けは禁物だ。その会社の社員や社長の立場に立って、蟲との最善の共存策を提案、実施できる人。そんな蟲師はこれから数年以上、大変需要があることだろう。蟲師も助けた相手に助けられるように、会社のデジタル化を助けることで、ご縁を得られ別の機会に助けてもらえる可能性もある。逆に、助けても理不尽なエンディングを迎えることだって当然ある。けれど、主人公のギンコが言うように、それぞれがそれぞれ生きるためにただ“居る”だけなのだ。
長々とシャワー中に思い浮かんだとんちを綴った。私たちは現代の蟲師なのだ。蟲師が知っているように、私たちも蟲、すなわちIT技術は恐れるものではなく共存できる存在であることを知っている。ただ、悪いように使う輩もいる。現代の蟲を扱う技能、すなわちITスキルを持っている方はぜひ現代の蟲師、すなわちITコンサルタント(IT専門家)になる道があることを覚えておいてほしい。そうして村々、もといIT技術を必要としている中小企業へ赴いて、話を聴いてみてほしい。そう、話を聴くだけでも良いのだ。今の日本の会社がどんなことを感じているのか、体感してみてほしい。そして最も忘れてはならないことは、会社も人であることだ。会社や企業と散々言ってきたが、それも蓋を開けてみれば人の集まりであり、その動き方は人の意思だ。会社を助ける、という言葉には人を助けるという意味が含まれていることを忘れてはならない。それを忘れなければ、困っている人の話を聴くだけでも充分である、ということの意味を理解することも、そう難しくは無いはずであるから。